book review

もし自治体首長が『ホラクラシー』を読んだら

もし自治体首長が『ホラクラシー』を読んだら

『HOLACRACY(ホラクラシー)役職をなくし生産性を上げるまったく新しい組織マネジメント』書評
(ブライアン・J・ロバートソン[著]、瀧下哉代[訳]、PHP研究所)

「管理職は、もういらない!」

本書のタイトル、『ホラクラシー』とは組織運営のための新しいソーシャルテクノロジー、組織を支えるOSです。
著者のブライアン・J・ロバートソン氏は、ソフトウエア企業を設立、指揮して急成長させたアメリカ在住の経営者、ホラクラシーの開発者。
ホラクラシーは、ザッポスCEOのトニー・シェイが導入したことで有名になりました。
その特徴は、トップダウン式の指揮系統ではなく、都市、あるいは人体のような分散型のシステムです。典型的な組織図に見られるヒエラルキーに対して、円(サークル)で成り立つホラーキーと呼ばれる構造は、有機体の中の臓器、臓器の中の細胞といった具合に機能して、一番外側のサークルがスーパーサークル、内側にはいくつかのサブサークル、そしてサークルの中には組織の中の役割(営業や経理など)があり、サブサークルとスーパーサークルの接点には、リードリンク、レプリンクという役割が細胞膜のように置かれています。
また、ホラクラシーには憲法と呼ばれるルールがあり、すべてのプロセスはこのホラクラシー憲法を遵守しなければなりません。これらはすべて、一人の英雄的なリーダーに頼るのではなく、サークルのメンバー全員が組織のひずみを感知して、修復していくような、内部から進化を起こし続けるために必要な要素なのです。

目次
第1部 職場が進化する⁉︎[ホラクラシーのすすめ]
1章 理想の組織とは
2章 権力を分配しよう!
3章 ホラクラシーの組織構造
第2部 進化を楽しめ[ホラクラシーを体感せよ]
4章 ガバナンス・ミーティング
5章 オペレーション・ミーティング
6章 進行役の全く新い仕事
7章 ホラクラシー流の戦略とは
第3部 進化を宿せ[さあ、ホラクラシーを始めよう]
8章 ホラクラシーを導入しよう
9章 全システムを導入できないなら
10章 ホラクラシーがもたらすもの

今回の書評では、4章 ガバナンス・ミーティングに光を当ててみたいと思います……。

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知事・四ノ宮漁夫は、悩んでいた。

庁内の止まらぬ不祥事。42歳から二期を務めて、常にリーダーシップを発揮してきた。のどかな漁港は、一体いつから腐敗してしまったのか……。
3週間以内に記者会見を開かねばならない。けじめをつけなければ、民意が、世論が、許さないだろう。遠く他県で起こっているデモ隊と警察の衝突を見ていると、ますますそう思えてきた。妻子には父母を頼って引っ越すよう、すでに伝えてある。
この短期間で、組織の屋台骨を建て直し、後進に道を譲らなければ。それは四ノ宮自身の今後のキャリアにも関わることだった。
だが、一体誰に?うちの役所にそんな骨のある男が居ただろうか。どいつもこいつも、格好だけは一人前で、行動が全く伴わないではないか。

「知事、大型の台風が接近しています。明日の来客は断りますか?」
秘書官の滝田がスケジュールを机に置く。
「この3時の神崎というのは?」
「知事の後輩と伺っております。先日、確認したはずですが」
そうだった。大学のサークルで面倒見てやったあの神崎だ。確かあいつは県内で教師をしていたはずだが、平日の昼間に来るとは、どうしたのだろうか。四ノ宮は滝田に手で合図をすると、部屋を後にした。

翌日、神崎は遅れてやって来た。
「先輩、すみません、遅れて」
その割には、全然申し訳なさそうな素振りはなかった。
「お前、何か変わったな。何があった?」
神崎は名刺を差し出した。
「教師を辞めて、リーディング・ファシリテーターになりました。先輩は最近どうですか?」
四ノ宮は答えず、首を横に振る。
「先輩。そろそろリーダーなんて辞めませんか?」
知事に向かって、何と無礼な後輩だろうか。四ノ宮は一瞬、「帰れ」と言おうと思ったが、神崎のあまりの馬鹿さ加減に呆れてしまった。

「最近、読書会をやっていまして、今日は先輩にオススメの本を持って来ました。ガバナンスについて考え直すタイミングかと」
神崎は鞄から青い表紙の本を取り出した。『ホラクラシー』と書いてある。
「ガバナンス?俺は知事だぞ!!」
四ノ宮の大声に、神崎は怯んだ様子もなく答えた。
「いいですか、先輩。先輩みたいなリーダーはもう時代遅れなんです。残念ながら。組織のひずみを感知するには、ファシリテーターになりましょう。まず、会議の名前を変えるべきです。そしたら、毎月一回、ガバナンス・ミーティングを開いてください」
知事の四ノ宮にこんなにストレートな物言いをする部下はいなかった。あぁ、そうだ。神崎は部下ではないのだ。だから、ひずみを表現できるのだ。神崎は四ノ宮の顔を見ながら続けた。
「スピードアップの鍵は減速にあり。ガバナンスは組織の屋台骨です。先輩はもうリーダーじゃありません。リーダーは皆んなです。先輩はガバナンスのファシリテーターとして、ホラクラシーというゲームのレフェリーになるんです。そうすれば、職員全員に共通する深いひずみ、対処すべき課題を見つけ、議題に上げることができるでしょう」
そう言うと、神崎は机に本を置いて出て行った。

四ノ宮はネクタイを外し、滝田にしばらく誰も入れないようにと言った。
それから、スケジュール帳の日付を確認して、ゆっくりと本のページをめくって行った。

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四ノ宮知事と神崎先生が話していたガバナンス・ミーティングには5つのプロセスがあります。

1 チェックイン・ラウンド
一人ずつ、雑念を言い表して、ミーティングに臨む姿勢を整えます。

2 会議運営上の連絡事項
会議運営上の事務連絡を手短に伝えます。

3 議題構築
先立って議題を決めず、ぶっつけ本番で議題(処理すべきひずみ)を追加していきます。

4 統合的意思決定プロセス
提案の提示、提案を明瞭にするための質疑応答、リアクション・ラウンド、修正と明瞭化、反対ラウンド、統合。

5 閉会
一人ずつ、感想を共有します。

ホラクラシーのミーティングでは、ルールに従って必要な発言しか認められず、反対意見についても、4つの基準を満たさなければ有効な反対意見として認められません。
ホラクラシーにおけるファシリテーターの役割は、場づくりや参加者の意見を引き出すことというよりも、ホラクラシーという新しいスポーツのレフェリーであるかのように、ホラクラシー憲法と呼ばれるルールを遵守し、執行することです。
しかしその一方で、ロール(役割)とソウル(人間)を区別・尊重すること、ロール(役割)は統治しても、ソウル(人間)は統治できないことを忘れてはなりません。

さて、四ノ宮知事は3週間という期限内に、新たなスタートとして、ガバナンス・ミーティングを開催できたのでしょうか?さすがの知事も、本を片手に一人で取り仕切るのは至難のわざだったことでしょう。そんな時に頼りになるリーディング・ファシリテーターがいると助かりますよね。

Read For Action協会には、マネジメント、ガバナンスに長けたリーディング・ファシリテーターが多数、在籍しています。
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※Read For Action組織概要→https://www.read4action.com/rfa/about_association/

(2016.11.30 榎本すみを)