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【第十回】論争の余地なきおすすめの本ー三島由紀夫『文化防衛論』

【第十回】論争の余地なきおすすめの本ー三島由紀夫『文化防衛論』

いつもありがとうございます。

 

最近厭世主義を開拓しつつある北畑淳也です。

今日も、第10回目の書評を書いていきます。

 

よければ読んでいただければと思います。

 

 

 

突然ですが、最近いたるところで以下のような声を聞きませんか。

 

  • これからはグローバル時代だから世界で活躍できないといけません。
  • 「稼ぐ力」がないとグローバル時代は生きていけません。
  • サラリーマンやっているだけではグローバル時代では生き残れません。

 

 

そしてこういうのを見ると

 

「そうかそうか。これからはグローバル時代だから世界に飛び出せる人間にならないといけないんだな」

 

と感じませんか。

 

 

 

去年くらいの私はそう思っていました。

 日本はダメだ海外に打って出なきゃと。

 

 

そして以下のようなスキルをつけなければならないと焦っていました。

 

  • よし英語を学ぼう
  • よしMBAを学ぼう
  • よしプログラミングを学ぼう

 

 

どうやらいろいろ調べると上の三つのスキルというのはグローバル時代を生きていくためには必須のようでして、これがあればアジアに飛び込んだり中国に飛び込めるようです。日本でも義務教育に上のようなものを徐々にいれていこうという動きがあります。

 

 

 

ただ、今現在の私はこういう動きに対して考えが変わりました。

 

 

 

「うーん。またこれかと。」

 

 

 

実は、日本というのは「開国だ。外にうって出ろ」とか「今の日本はもうダメだ」と叫んだことが歴史上これで3回目なんです。

 

 

 

それは第一回目が明治維新と呼ばれる時代、第二回目が第二次世界大戦後の戦後民主化の時代な訳ですけども、その時代に名を馳せた偉人というのは何を考えたのかが今こそ知るべきことだと私は考えています。

 

 

 

一言で言えば、世の中の流れと逆の動きをしました。

 

 

 

 

その筆頭例として、前回の書評では、福沢諭吉を紹介しました。

 

今回は戦後、敗戦に伴い「属国根性」が植え付けられた日本人へ警鐘を鳴らした三島由紀夫の著書を扱います。今の日本はダメだという感情の高まりが当時と極めて共通する部分がありこれこそがグローバル時代にあって読むべき一冊だと私は考えています。

 

  1. グローバル時代に現れる愚かな兆候
  2. グローバル時代だからこそ日本人が身につけておきたいもの
  3. 合わせて読みたいおすすめの本

 

 

グローバル時代に現れる愚かな兆候

まずあらかじめ申しますと、明治期と戦後、そして現在に共通するのは何かと言うとそれは、「停滞感」です。

 

 

そして、その「停滞感」があるところに「改革だ改革だ」と「畳み掛けるような思想」が人々を席巻するというところも共通しています。

 

 

福澤が叱咤し、戦後には三島が警戒した悪魔的な思想が今の日本でもまた蘇っているのです。

 

  

 

 

 

 「日本がダメだから海外で稼げ」「日本はもう成長しないからアジアへうって出ろ」

 

 

普通、外国でこういうことを言えば袋だたきにあうのですが、それすらも言わないくらいに日本社会というのはおかしくなってきているんです。

 

 

 

こういう発想は根底に社会が個人のみでできていると勘違いしているのですが、この先代への恩知らずについて三島は以下のように述べています。

 

しかし、われわれの社会における生き方は、彼らのいうほど単純なものではない。彼らのいわゆる体制的権力側のオープン・ソサイエティというものは、実は存在するかの如くして存在せず、われわれの周りに茫漠としたアモルフな形をもって漂っている。
三島由紀夫『文化防衛論』

 

*アモルフというのは「得体の知れない」とほぼ同義

 

 

ここで三島の言っている「オープンソサエティ」は紛れもなく現代で言うところの「グローバル」です。

 

 

三島に言わせれば、自らの手で国を滅ぼそうとしている自覚もなければ、滅ぼすことがどれほど恐ろしいかも知らないのが「グローバル」が口癖の人たちです。

 

 

 

そしてさらに恐るべきは過去の二回の時代の転換点にはこういった忘恩思想に健全な歯止めをかける人々がいたのですが、今はないのです。 

 

 

 

グローバル時代だからこそ日本人が身につけておきたいもの

では、三島は国柄が解体されようとする時代に何を重視したのか?

 

それはもちろんアメリカ型の経営を学ぶことでもなければ、英語力でもありません。

 

三島は外国と向き合わざるをえない日本人に以下のように語ります。

 

さらに正確に言えば、われわれは彼らの未来を守るのではなく、彼らがなお無自覚でありながら、実は彼らを存在せしめている根本のもの、すなわち、我が歴史・文化・伝統を守るほかはないのである。これこそ前衛としての反革命であり、前衛としての反革命は世論、今や左も右も最もその顔色をうかがっている世論の支持によって動くのではない。
三島由紀夫『文化防衛論』

 

 

自ら無自覚である歴史や文化、伝統を学べと言っているのです。

これこそ自らの現存在を規定するのだと彼は述べます。

 

 

 

 

私はこれらの考えに非常に共感しています。

これこそ特に近代以降に名を残してきた偉人に共通する思想だと。

 

 

最近興味があって明治期から昭和にかけての偉人を見ていくのですが、その反応が現代で一般的なものと本当に180度異なるのです。

 

 

 

海外留学をしたり、翻訳をしていたり、キリスト教に入信したりと海外をよく知ったり「啓蒙主義的」と言われる人こそ、逆に自らの伝統を重んじる保守思想を完成させたり、尊王攘夷論者なんです。

 

 

 

福澤も天心も内村も新戸部も「アジアに飛び込め」「日本ダメだ」とは言っていません。

 

 

 

 繰り返しになりますが、今の時代は今までであればブレーキをかける側だった人までアクセルを踏んでしまっているのです。

 

 

外国からのこのこやってきたものの取り込みについては、「スピード感」などいらないので詳細に吟味し、敵と判断できるものはうち払えばいいのです。

 

われわれは、護るべき日本の文化・歴史・伝統の最後の保持者であり、最終の代表者であり、且つその成果であることを以って自ら任ずる。「より良き未来社会」を維持するあらゆる思想とわれわれは尖鋭に対立する。なぜなら未来のための行動は、文化の成熟を否定し、伝統の高貴を否定し、かけがえのない現在をして、すべて革命への過程に化せしめるからである。自分自らを歴史の化身とし、歴史の精華をここに具現し、伝統の美的形式を体現し、自らを最後の者とした行動原理こそ、神風特攻隊の行動原理であり、特攻隊員は「あとに続く者あるを信ず」という遺書をのこした。
三島由紀夫『文化防衛論』

 

「文化は大切」と言うのは簡単ですが、現代には、本質的には真逆の発言をしたり真逆の行動をする人が少なくありません。

 

 

本当にそう思うならば、今なお無自覚な我が国の文化を学ぶことこそグローバル時代に日本人が生き残る術ではないでしょうか。

 

 

合わせて読みたいおすすめの本

外圧に対して打って出るのでもなければ、外圧に対して全てを受け入れるのでもない。

 

その「常識」こそが愚行へのブレーキであるということを教えてくれる著書を今こそ読み返さなければなりません。

 

最後に合わせて読みたいおすすめの本を書かせていただきます。

下記に書く著者は一部ファシズムだの右翼だのと言われることもありますが、その判断は是非一度ご覧になった上で。

 

  • 岡倉天心『茶の心』
  • 内村鑑三『余はいかにしてキリスト教となりしか』
  • 中江兆民『三酔人経綸問答』
  • 坂口安吾『日本文化私観』
  • 小林秀雄『本居宣長』
  • 伊藤仁斎『童子問』
  • 荻生徂徠『政談』 

 

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