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【第十二回】論争の余地なきおすすめの本ー福田恆存『保守とは何か』ー

【第十二回】論争の余地なきおすすめの本ー福田恆存『保守とは何か』ー

いつもありがとうございます。

最近、色々と本を読むのに時間を取っていたら更新が滞っておりました。

 

 

久々に書かせていただきます。北畑淳也です。よろしくお願いいたします。

 

 

そういえば、最近巷では衆議院の解散があったこともあり政治に関わる話題が盛んに聞かれるようになりましたね。

 

 

というわけで今日はそれに関わる本をご紹介することにしました。

 

 

早速ですが、選挙前というと、政治関連の番組で必ず見かけるものがあります。

 

それは各政党をカテゴライズするというものです。

 

 

「保守」か「リベラル」か

「右」か「左」か

 

 

こういうカテゴライズを見たことがある人も多いでしょう。

ただ、この「保守」や「リベラル」のような形で特定の政治家や政党をカテゴライズする言葉がどのような意味で使われているかご存知でしょうか。

 

 

そんな方には福田恆存の『保守とは何か』がお勧めです。

 

今日は、少しだけですが日本を代表する保守思想家福田が述べた「保守」についてご紹介します。

  1. 保守とは何か
  2. 「保守」がなぜわかりにくくなっているか
  3. 合わせて読みたいおすすめの本

 

 

保守とは何か

さて、少しだけ断りをあらかじめ入れておきます。

 

「保守」については個々に色々な解釈があるに違いありません。

それ故にあくまで参考程度に、福田恆存という人物の「保守とは何か」に付き合っていただければ幸いです。

 

 

 

早速、本題です。福田の考える「保守」とは何なのか。これは以下の一節に最もよく表れていると私は考えています。

保守的な生き方、考え方というのは、主体である自己についても、すべてが見出されているという観念をしりぞけ、自分の知らぬ自分といふものを尊重することなのだ。
福田恆存『保守とは何か』

 

一言で言うと人間理性には限界があるという認識を持つことですね。

これが福田の保守思想の根幹だと私は考えています。

 

 

近代啓蒙思想への批判的な態度から生まれたのでしょう。

 

 

ちなみになぜここが福田の保守思想において根幹だと言えるのか気になる方がいるかもしれません。

 

その理由を少しだけ書きますと、この箇所が古今東西場所を問わず伝統的保守思想を紡いだ人物に共通して見られる保守思想の根幹だからなんです。つまり、福田もまた、独善的にならず、伝統的保守思想の核心部分を尊重しているということですね。

平たく言えば、保守思想に「完全なオリジナル」などないということを福田は暗に言っているわけで、福田の保守に何か斬新なものを求めることは福田から言わせれば「保守」ではないということなのです。 

実は海外だとエドマンド・バーク、モンテスキュー、トックビルなども同じ考えですし、国内だと三島由紀夫、福沢諭吉、岡倉天心、小林秀雄などなどもこの考えです。

 

 

 

平たく言うと「人間は間違える」という前提を持って物事を考えるということですね。

だからこの意味での「保守」を名乗る政治家は人間が間違えることを前提に政策を作ったり法律を制定したりしようとするということになります。

 

保守派が合理的でないのは当然なのだ。むしろそれは合理的であつてはならぬ。保守派は見通しをもつてはならない。人類の目的や歴史の方向に見通しのもてぬことがある種の人々を保守派にするのではなかつたか。
福田恆存『保守とは何か』

 

ところで、見通しを立てないということはとにかく現状維持をすることが保守ということなの?となられる方もいるかもしれません。

 

しかしながら、福田によるとそれは違うようです。

 

保守派がつねに現状に満足し、現状の維持を欲しているといふ革新派の誤解である。戦術的誤解でなければ希望的観測である。日本の保守党すら、明治以来今日に至るまで、たえず進歩と改革を考へてきた。
福田恆存『保守とは何か』

 

 

進歩や革新を一切否定するわけではないものの熟議を重ね漸進的に進めるべきということなのです。

 

 

色々と書いてきましたが一言でまとめます。

 

福田にとっての保守とは人間は誤るという理性の限界を前提に持ち、漸進的に物事の価値判断を行う態度のことなのです。

 


「保守」がなぜわかりにくくなっているか

福田の保守観のほんの一部だけ触れました。詳細はぜひ読んでいただくとしてここでは、今のをもとに最近の「保守」について少しだけ書こうと思います。

 

 

昨今どうも「保守」とは何かがわかりにくくなっている気がしませんか。

少なくとも私には日本の保守政党を答えろと言われたらかなり困ります。

 

 

例えば、自民党というのは「保守政党」と考えている人が多いかもしれません。

 

 

ただ、どうも先ほどの福田恆存が述べたような保守とは違うのではないかと感じる人も多いことでしょう。

 

 

実はこれには理由がありまして、自民党がアメリカの「保守観」を輸入してきたからだと言われています。

 

 

どういうことかというと、ざっくり言うとアメリカと日本では保守観が全く違うのです。

 

アメリカというのは建国当初から「個人の自由を守ること」を至上の価値としてきた近代国家です。それ故に、例えば、個人ができるだけ市場で自由に経済活動をできるように国の干渉を減らすことを「保守」と考えます。

 

 

 

一方でこれは、イギリスや日本の保守思想などとは大きく相違があります。

昔の日本やイギリスでは個人の自由の行き過ぎに対して国家が干渉したり、伝統的な習慣などを重視することで個人の自由をむしろ制約することこそ「保守」と考えてきました。

 

特に日本の場合は、皇室を中心にあらゆることが回ってきました。

 

 

 

こういったこともありメディアは「保守」というのに何か違うような気がするわけです。おそらく自民党の中枢にいる人がアメリカの「保守観」にかなり影響されているのではないかというのが私の見立てです。

 

 

 

どちらが良いかということについてはここでは割愛しますが、一つの結論として「保守」は個々の国の成り立ちなどで大いに変わるということが言いたかったことでした。

 

それ故に、メディアがいう「保守」や「リベラル」に騙されず、自国の伝統を学んだ上で、改めて「保守」について考えてみてはいかがでしょう。

 

その意味で福田恆存はぜひ一読ください。

 


合わせて読みたいおすすめの本

最後に伝統的保守思想を学びたい方向けにおすすめの本を記載いたします。

  • シャルル・ド・モンテスキュー『法の精神』
  • エドマンド・バーク『フランス革命の省察』
  • マイケル・オークショット『政治における合理主義』
  • アレクシ・ド・トックビル『アメリカのデモクラシー』
  • ハルフォード・ジョン・マッキンダー『デモクラシーの理想と現実』
  • 荻生徂徠『政談』
  • 小林秀雄・岡潔『人間の建設』
  • 福沢諭吉『学問のすゝめ』
  • 吉野作造『吉野作造評論集』
  • 三島由紀夫『文化防衛論』

 

以上、簡素ではありましたがご紹介となります。

 

*上に書きました著書の一部を過去記事にて取り扱っております。 興味ございましたらご覧ください。

【第五回】論争の余地なきおすすめの本ーエドマンド・バーク『フランス革命の省察』:Read For Action ブログ

 

【第九回】論争の余地なきおすすめの本ー福澤諭吉『学問のすゝめ』ー:Read For Action ブログ

【第十回】論争の余地なきおすすめの本ー三島由紀夫『文化防衛論』:Read For Action ブログ

 

 

 

 

 

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