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【第十四回】論争の余地なきおすすめの本ー小林秀雄『読書について』ー

【第十四回】論争の余地なきおすすめの本ー小林秀雄『読書について』ー

ご無沙汰してます。北畑淳也と申します。

書評コーナー担当として本日も一冊ご紹介していきます。

 

 

今日は読書の秋ということもあり「読書自体」に関する本を紹介いたします。

 

 

いつの時代も本屋に行くと目につく本があります。

「どのような本を読むべきか」「どうやって本を読むべきか」という問いに答えうる本の数々です。「〇〇な読書術」「〇〇が実践している〇〇な読み方」とかですね。

 

 

おそらくこういう本が流行るのは現代人の読書をされる多くの方が常に今の本の読み方が妥当かどうかをさまよっているのかもしれません。

 

 

そこで、今日は数ある読書に関する論考の中で珠玉の「読書論」を書いている小林秀雄の『読書について』を少し紹介いたします。批評の神様が述べる読書術について今日はご紹介いたします。

 

■目次

 多読と精選

 明快すぎる読書術

 合わせて読みたいおすすめの本  

■多読と精選

まず、読書をするものの多くが総じてぶつかる問いがあります。

それはここに挙げた「多読」か「精選」かですね。

 

本はたくさん読むのがいいのか、少ない本をよりじっくり読んだほうがいいのか。。。

 

私自身この問いに悩んだことがあります。

 

 

では、小林秀雄はどう考えているのか。

意外に思われるかもしれませんが、結論から申しますと「まずは濫読せよ」です。

 

努めて濫読さえすれば、濫読に何の害もない。寧ろ濫読の一時期を持たなかった者には、後年、読書が本当に楽しみになるという事も容易ではあるまいとさえ思われる。読書の最初の技術は、どれこれの別なく貪る様に読むことで養われる他はないからである。

小林秀雄『読書について』

 

ショーペンハウエルだったり、今もお偉い方だったりは「精選せよ」というわけですが、濫読推奨というのが小林らしさを感じます。

 

なぜ彼が濫読を彼が勧めているのか?

それは例を挙げると良い松坂牛も安物を食べたことがなければその良さに十二分に気づくことができないからなんです。

 

 

つまり、とにかく体が小さいうちはまずはいろいろ食べて体を大きくすれば良い。

そして、ある程度体ができてきたらそこで「何を食べるべきか」を考えれば良いということなのです。

 

 

最初からいい本は一人では見抜けません。

 

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■明快すぎる読書術

ただ、小林秀雄はいつまでも濫読していることを推奨しているわけではありません。

読むべき対象を徐々に読書体験を通じて絞っていくべきだと述べています。

 

 

濫読を経ていよいよどうすべきかを彼は語ります。

一言で言えば、「一流の作家」の本を読めと彼は述べます。

そして、その作家の全集から日記に至るまですべて読むように勧めます。

 

一流の作家なら誰でもいい、好きな作家で良い。あんまり多作の人は厄介だから。手頃なのを一人選べば良い。その人の全集を、日記や書簡の類に至るまで、隅から隅まで読んでみるのだ。そうすると、一流と言われる人物は、どんなに色々なことを試み、色々なことを考えていたかが解る。彼の代表作などと呼ばれているものが、彼の考えていたどんなにたくさんの思想を犠牲にした結果、生まれたものであるかが納得出来る。
小林秀雄『読書について』

 

ここで「一流」とはなんなのか?という疑問が湧くかもしれません。

それに関して小林は明確にしていませんが、濫読の過程で培った体験値をもとに判断すべしということだと私は考えています。

 

 

ただ、理想としては濫読の前段階で「一流のもの」を誰かに紹介してもらっておくことが良いようです。(私にはそんな人がいませんでしたが)

質屋の主人が小僧の鑑賞眼教育に、先ず一流品ばかりを毎日見せることから始めるのを方とする、ということを何かで読んだが、いいものばかり見慣れていると悪いものがすぐ見える、この逆は困難だ。惟うに私たちの眼の天性である。この天性を文字鑑賞上にも出来るだけ利用しないのは愚だと考える。こうして育まれる直感的な尺度こそ後年一番物を言う。
小林秀雄『読書について』

 

ここからは個人的な見解です。

この「一流の作品」に該当するのは「古代の作品」であると私は考えています。

 

 

 

古典作品は、現代人が失ったものを教えてくれる珠玉の一冊であることが少なくないからです。

ベーコンやダーウィン、ヘーゲルなどが生み出した「進歩」というカテゴリーの中で生きる我々は本当に「進歩」しているのかの検証が極めて不足しています。ある一面では大いに退行しているのではないかと考えなくてはいけないのです。

 

トックビルも同様のことを述べています。

古代人の文学作品には非の打ち所がないと私が見ているわけではない。私はただ、それらには特別の長所があって、それがわれわれに固有の欠点を補うのに驚くほど役立ちうると思うのである。そうした作品はわれわれが落ちるのを崖っぷちで支えてくれる。
*アレクシ・ド・トックビル『アメリカのデモクラシー 第二(上)』

*トックビルは一般的にアメリカの民主主義について書いた人物と誤解されがちだが、民主主義というものの危うさをアメリカを通して伝えた人物。なお、まだヨーロッパが覇権を握っていた時代に、アメリカとロシアが覇権を争う世界がくるとさりげなく予言しているところなどいわゆる政治思想における「天才」と言われている。

 

あなたにとっての一流の作家とは誰でしょうか。

そして、あなたにとって一流の作品とはなんでしょうか。

 

本論考がそれを考える一助となれば幸いです。

  

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■合わせて読みたいおすすめの本

最後に例によって合わせて読むと良いかもしれない本をご紹介いたします。

下記は、私の個人的な趣味ではなく「世界が認める一流の作品」です。

 

まずは一冊読んでみてはいかがでしょうか。

 

  1. プラトン『ソクラテスの弁明』
  2. モンテスキュー『法の精神』
  3. セルバンデス『ドンキーホーテ』
  4. マルクス『資本論』
  5. ケインズ『雇用、利子及び貨幣の一般理論』
  6. ハイデガー『存在と時間』
  7. ウェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』
  8. トックビル『アメリカのデモクラシー』
  9. アーレント『全体主義の起源』
  10. ティボン『ローマ帝国衰亡史』

 

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