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【第十六回】論争の余地なきおすすめの本ーアレクシ・ド・トクヴィル『アメリカのデモクラシー』ー

【第十六回】論争の余地なきおすすめの本ーアレクシ・ド・トクヴィル『アメリカのデモクラシー』ー

ご無沙汰しております。

北畑淳也と申します。

 

 

今日も書評担当として一冊ご紹介できれば幸いです。

 

 

本日取り上げるのはアレクシ・ド・トクヴィル『アメリカのデモクラシー』です。

 

 

「つまんなそう。。。。」

 

 

まあ待ってください笑 

タイトルからして「稼ぐ力」やら「人生の成功法則」を探している人からすると興味が持てないかもしれません。実際私も最初はこの本の偉大さがわかりませんでした。

 

 

ただ、何度も読むうちに「名著」と呼ぶにふさわしい本だとわかったのです。

この本はタイトルからイメージするようなアメリカのデモクラシーについて書くことを主目的としているのではありません。

 

もちろん表層的に読めばそうなのですが、トクヴィルの偉大さはそこにあるのではないのです。

 

 

 

トクヴィルはアメリカで勃興しつつあったデモクラシー社会を目撃した際に、その観察をする中で時代に先んじてデモクラシー社会の恐ろしさに気づいたのです。これはとんでもないものかもしれないと。

 

 

今日はトクヴィルが述べたデモクラシー世界における危険性の中でも特に個々人が共同してコミュニティを作ることを意味する「結社」組織(中間組織)の崩壊がもたらす社会の危機について少し筆を取らせていただきました。

 

 

一言でその危険性を述べますと中間組織が崩落していく社会では個人が孤立化し、秩序・慣習をはじめとした「常識」が失われ、人々を誤った方向に導いてしまうのです。

  

■目次

 中間組織が崩壊するとどうなるか。

 ▶今なぜ「結社」が重要か

 合わせて読みたいオススメの本  

■中間組織が崩壊するとどうなるか。

中間組織というと「なにそれ?美味しいの?」となる人が少なくないかもしれません。

 

馴染みのない方も多い方もいるかもしれませんので、本題に入る前に中間組織とは何かを少しだけお話しいたします。

 

 

これは一言で言えば、「個人」と「社会」をつないでいる具体的なものの事を言います。日本の場合は会社もその大きな部分を占めます。

 

他には、教会、自治会、農協、学校などがあげられますね。

つまり、極端な話、中間組織がない社会ではすべての個人は孤立するわけですね。

 

 

 

この個人を孤立へと導く中間組織の崩壊が今日本では急速に進んでいるのです。

政治的トピックでいうと下記の3点などは代表例としてあげても良いかもしれません。

  • 「既得権益」という名の下攻撃を受ける日本型雇用形態
  • 郵政民営化と称して行われた郵便局への市場原理導入
  • 農協改革と称して行われる全農への攻撃

*都会にいるとわかりませんが、農協や郵便局は地域における最大のコミュニティーであることが少なくありません。

 

 

 

その他ミクロのレベルで言えば、自治体の力などは都市部への人口流入に伴い著しく低下しています。これはこの記事を読んでいただいている方にも実感いただけるのではないでしょうか。

 

 

都市化された地域に住む人ほど、会社とワンルームマンションへの往復という人も少なくありません。これは中間組織が都市部においては郊外に比べてより壊滅的であるからなのです。

 

 

では、なくなっていく背景はなんなのか?に着目しましょう。

これは二つ挙げられます。

 

 

一つはデモクラシーが持つ思想が原因で。

もう一つが、人々の思想に占める功利主義のウエイトが著しく増していることが原因で。

 

 

後者はトクヴィルがそこまで直接的に指摘していませんが、間接的に1を強化する思想として避けては通れません。

 

 

 

まずは一つ目からみましょう。

デモクラシー社会では皆が平等であるということを価値とする社会なのですがそれが喜ばしい側面もある一方で、皆が無力となるネガティブな面があるとトクヴィルは述べるのです。

 

この無力状態にあって自ら共同する努力を怠れば中間組織は崩壊します。

ところが、民主的な国民にあっては、市民は誰もが独立し、同時に無力である。一人ではほとんど何をなす力もなく、誰一人として仲間を強制して自分に協力させることはできそうにない。彼らはだから、自由に援け合う術を学ばぬ限り、誰もが無力に陥る。
アレクシ・ド・トクヴィル『アメリカのデモクラシー』

 要するに、デモクラシーは内在的に個人をバラバラにするとともに従来存在した社会との強固な結びつきを弱体化させるのです。

 

 

そして、それの何が悪いのかなのですが、無力な個人が一人でいるだけでは、人間精神は発展せず秩序だったものとはなりえないと彼は付け加えるのです。

 

感情と思想があらたまり、心が広がり、人間精神が発展するのは、全て人々相互の働きかけによってのみ起こる。・・・・このような行動が民主的諸国にほとんどないことを私は既に示した。そこではだからこれを人為的に作らねばならない。そして、これは結社だけがよく為し得ることである。
アレクシ・ド・トクヴィル『アメリカのデモクラシー』

 

 

さてもう一つの方も見てみましょう。 

「人々の思想に占める功利主義のウエイトが著しく増している」とは、平たく言えば、多くの人が「稼ごう稼ごう」と考える思想が強化された社会のことで、自分のことしか考えなくなっていきます。これは先ほどのデモクラシーによる個人の分断と相まってより強固なアトム化した個人が出来上がります。

 

 

しかも功利主義はそのものの見方の本姓からして「非合理的」な共同体を破壊する力学が働いてしまいます。

 

デモクラシーと資本主義

その両方が強化されていく社会では個人が分断され野蛮な社会に近づくのです。

 

 

 

ここで、トクヴィルが中間組織の意義にこだわった理由が見えてくるのではないでしょうか。

 

民主的な国に住む人々が政治的目的のために団体を作る権利と趣味を持たないとすれば、彼らの独立は大きな危険にさらされるであろう。それでも、富と知識とは長く維持することができるかもしれない。だが日常生活の中で結社を作る習慣を獲得しないとすれば、文明それ自体が危機に瀕する。私人が単独で大事をなす力を失って、共同でこれを行う能力を身につけないような人民は、やがて野蛮に戻るであろう。
アレクシ・ド・トクヴィル『アメリカのデモクラシー』

 

彼は、共同で何かをなすという一体感を作り出していた中間組織の崩壊は「常識」の崩壊と時を同じくし、その結果無秩序で野蛮な世界が完成するということを伝えたかったのです。

 

 

もちろんすべての常識が良いものとは限りません。

しかしながら、昨今の「常識」や「固定観念」をとにかく悪玉視するのもまた問題があるのです。トクヴィル同様にエドマンド・バークも伝統が紡ぐ「常識」を非常に重視しました。

 

固定観念の中でも、長らく存続してきたものや、多くの人々に浸透しているものは、分けても尊重されるべきだと考える。誰もが自分の理性に従って行動するのは、社会のあり方として望ましいことではない。ここの人間の理性など、おそらく非常に小さなものに過ぎないからである。国民規模で定着したものの見方や、時代を超えて受け継がれた考え方に基づいて行動した方が、はるかに賢明といえるだろう。
エドマンド・バーク『フランス革命の省察』

 

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■今なぜ「結社」が重要か

「個人が孤立していく社会では「常識」が失われ野蛮な時代が到来する」

 

このトクヴィルの指摘を考えれば「結社」の重要性が再考されてしかるべきであると私は考えています。

貴族社会にあっては、人々が全体として固く結びついているから、行動するために結社を作る必要がない。そこでは、富と力を有する市民が、それぞれ、恒久的で脱退できない一つの結社の蝶のようなもので、この結社の構成員は全て彼に従属させられ、彼の計画の実現に協力させられている。ところが、民主的な国民にあっては、市民は誰もが独立し、同時に無力である。一人ではほとんど何をなす力もなく、誰一人として仲間を強制して自分に協力させることはできそうにない。彼らはだから、自由に援け合う術を学ばぬ限り、誰もが無力に陥る。
アレクシ・ド・トクヴィル『アメリカのデモクラシー』

 

イノベーションで有名なシュンペーターと言う人がいるのですが彼の著書に『資本主義・社会主義・民主主義』というものがあります。

 

 

シュンペーターが何を意味していたのかは解釈の余地がありますが、少なくとも現代から読んだ時にこれらの全てが何らかの危険なものであるとわかってしまっています。

 

 

その中で結社の努力をすることはいかなる「主義」をとるにせよそこから生じる社会制度の歪みに対する健全な歯止めとして最善の手段なのだというのが私の見解です。

 

 

 

Read For Actionは読書会を通して結社の重要性を説く団体です。(少なくとも私はそう考えています)

 

中間組織は一人でも多くの人が参加することでそのバラエティーや基盤が強固なものとなります。トクヴィルが述べた個人が共同して作り上げる「結社」にまさに当てはまるのが読書会なんです。

 

 

そしてこの中間組織もまた多くの人により支えられることでより強固な基盤を得ていずれは「常識」を生み出していくでしょう。

 

そのエッセンスの一部にあなたの知恵もお借りできれば幸いです。 

 

 

Read For Action –日本最大級の読書会コミュニティ

 

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■合わせて読みたいオススメの本

最後に関連してオススメの書籍をオススメします。

 

シャルル・ド・モンテスキュー『法の精神』

エドマンド・バーク『フランス革命の省察』

カール・ポランニー『大転換』

ハンナ・アレント『政治の約束』

 

 

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