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【第十九回】論争の余地なきおすすめの本ーマックス・ヴェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』ー

【第十九回】論争の余地なきおすすめの本ーマックス・ヴェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』ー

ご無沙汰しております。

 

北畑淳也と申します。

本年も書評を少しずつではありますが、書いていければと書いておりますのでよろしくお願いいたします。

 

Read For Actionの読書会も引き続きよろしくお願いいたします。

 

新年一発目のご紹介はマックス・ヴェーバーの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』を取り上げます。こちら社会学という学問を生み出す原動力になったとも言われる書物であるとともにマルクス『資本論』、ケインズ『一般理論』と並んで世界的名著としてよく取り上げられる書物です。

 

 

本日はこちらの書物の概要を少しだけ見つつ、ヴェーバーの考察から何が学びとれるかについて書かせていただきます。

よろしくお願いいたします。

 

■目次

 ▶本著の骨子

 ▶思想・哲学を今最も学ばなければならない理由

 ▶合わせて読みたいおすすめの本

■本著の骨子

マックス・ヴェーバーは社会の教科書などでも出てくる著名な社会学者ですが、その中でもこの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』は著名です。

 

なぜこの作品が重要かについては各方面から考察がありますが、私なりのこの作品の重要性を書いていきます。

 

 

まずはこの著書が言わんとすることについてあらましを少しだけ書いていきます。

ヴェーバーの言わんとすることはだいたい以下の感じです。

 

 ・・・・

資本主義が発展している国には何か共通点がないかと考えながらヨーロッパを見回してみた。

 

するとどうもプロテスタントの国(ドイツなど)において著しい経済発展が見られる。

プロテスタントは禁欲を至上の価値に置く宗教のはずだ。

私的利害を追求するという資本主義と相反するように見えるがどういうことなのか。

 

 

研究を重ねていくと言えるのは、禁欲であることと資本主義が発展することは相反するものであるどころかむしろ非常に親和性の高いマッチングかもしれない。

・・・・

 

ざっとこんな感じです。(はしょりすぎ)

 今のまとめ方に近い形でヴェーバー先生がまとめてくれている箇所があるので引用します。

禁欲的で信仰に熱心であるということ、他方の資本主義的営利生活に携わるということと、この両者は決して対立するものなどではなくて、むしろ逆に、相互に内面的な親和関係にあると考えるべきではないか、と。
マックス・ヴェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』

 

 

学者の人に怒られそうな極めて簡潔なまとめですがまあそんな感じってことにしてください。

 

ヴェーバーは禁欲から生じる勤勉さや克己心が数多くのイノベーションや生産性向上を生み出してたという解釈を与えています。

思考の集中能力と、「労働を義務とする」この上なくひたむきな態度、しかも、これに結びついてこの場合とくにしばしば見いだされるのは、賃金とその額を勘定する厳しい経済性、および労働能力の著しい向上をもたらす冷静な克己心と節制だ。
マックス・ヴェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』

 

ヴェーバーは著書を通してプロテスタントの思想と資本主義の思想がいかにしておりあってるかをこの後書いていきます。

 

 

さて、この著書はプロテスタントが多くない日本になじみがなく読むに値しない本でしょうか。もっとお金を稼げるようになる本を読んだ方がためになるでしょうか。

 

そういう人の疑問に次に答えさせていただきます。

 

 

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■思想・哲学を今最も学ばなければならない理由

ヴェーバーが何を言いたいのか?

これについては先ほども述べたようにもちろんたくさんあるのですが、その大きな一つとして私があげたいのは「思想」というものの影響力の大きさですね。

 

深読みしすぎですが、ヴェーバーは「プロテスタントの国すべてで経済発展が著しい」とか「プロテスタントの人は例外なく勤勉だ」という厳密性は求めていませんでした。私が推測するに彼がしたかったことは一見矛盾するものの中に実は極めて「合理的な」つながりがある可能性があるかもしれないという問題提起です。

 

 

 

というのも、資本主義というと禁欲思想とは縁遠く、神なき世界に生まれてきた世界観であり、人々が信仰を捨てることによって強化されてきた世界観だというイメージを持つ方ことがほとんどだからです。

 

 

ただ、信仰や哲学とは縁遠く見える資本主義のカテゴリーもまた「思想」が動かしているとヴェーバーは言いたいのです。確かに資本主義の進捗に連動し宗教が権威を失っていったことは事実ですが、人々はやはり「思想」を求め、それによって動かされることを望んでいたという彼なりの「反証」なのです。

 

 

ケインズというこれまた経済思想に多大なる影響を及ぼした方がいるのですが、彼はその著書の中で以下のように述べています。

 

経済学者や政治哲学者の思想は、それが正しい場合にも間違っている場合にも、一般に考えられているよりもはるかに強力である。事実、世界を支配するものはそれ以外にはないのである。どのような知的影響とも無縁であると自ら信じている実際家たちも、過去のある経済学者の奴隷であるのが普通である。権力の座にあって天声を聞くと称する狂人たちも、数年前のある三文学者から彼らの気違い染みた考えを引き出しているのである。私は、既得権益の力は思想の漸次的な浸透に比べて著しく誇張されていると思う。もちろん、思想の浸透は直ちにではなく、ある時間をおいた後に行われるものである。なぜなら、経済哲学および政治哲学の分野では、二五歳ないし三十歳以後になって新しい理論の影響を受ける人は多くはなく、したがって官僚や政治家やさらには煽動家でさえも、現在の事態に適用する思想はおそらく最新のものではないからである。しかし、遅かれ早かれ、良かれ悪しかれ危険なものは、既得権益ではなくて思想である。
ジョン・メイナード・ケインズ『雇用、利子及び貨幣の一般理論』

 

ケインズが述べているのは、どれほど自らを「中立」「客観的」と思う人がいようとも彼らもまた何らかの過去の「思想」に覆われているということであり、それに無自覚であることほど危険なことはないということです。

 

 

自らを中立であり客観的であると考える人は「哲学」や「思想」を軽視し、蔑視する人が少なくありません。「そんなもの金にならない」「もっと実利的なことを学ぶべきだ」そう彼らはよく述べています。

 

 

しかしいうまでもなく「金になるか」を重視したり、彼らにとっての「実利的」は過去の何らかの思想を元にできています。

それゆえに彼らもまた「思想」に覆われた一人の人間でしかありません。

 

 

そこを忘れて「自らを神」とでもいうかのような立ち居振る舞いは許されないおごりなのです。

 

 

こういうわけで我々は人々を突き動かす「論理」の前提となる道徳や思想をより多く、より多様に理解していかなければなりません。

 

 

昨今、日本ではネオリベ(新自由主義)ネオコン(新保守主義)から派生したグローバリズム賛美が「客観的」「中立」な思想として主流的になっています。

 

 

 

既存の秩序を解体しながら「イノベーション」「規制緩和」「改革」と叫ぶのが彼らの特徴ですが、あれほど恣意的で無茶苦茶な思想もありません。

 

 

 

ただ、恐ろしいことにビジネス界隈はこの思想に乗っ取られており、本屋に行ってビジネス書を取り上げて開けばだいたいこのネオリベ・ネオコン思想に乗っ取られていることがほとんどです。

 

 

例えば、彼らはこれからの「正解」として下記のように述べます。

 

  • グローバル化は既定路線だ
  • 日本はもう成長しないからアジアに打って出ろ
  • 英語をもっと早い段階から学ばせた方がいい

 

もちろん上に書いた考えは「客観的」でもなければ「自然」でもなく、思想に裏打ちされた「選択」です。

 

 

その証拠にグローバリズムが自然現象などではなく人為的なものであることはトランプ大統領の誕生やイギリスのEU離脱から明らかになりました。

 

彼らの考えが一つの思想にすぎず彼らの「理論」を覆すあまりに不都合な事実が次々今後も出てくるでしょう。

 

 

 

 

しかし、今や軌道修正が求められているこの主流的な思想に今の所修正をかけられる人がいません。

おそらくネオリベ・ネオコン思想を持っていないと今の学者の世界では偉くなれないのでしょう。

 

そういった集団催眠状態の中で我々が今すぐにできることとしては無自覚である思想を自覚し、世の中が何か得体の知れないものに乗っ取られているかもしれないという警戒感を高めることかもしれません。 思想の相対化です。

 

「正気かどうかは統計上の問題ではない」このことばには深遠な叡智が含まれているような気がした。
ジョージ・オーウェル『1984』

 

 

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■合わせて読みたいおすすめの本

最後に合わせて読みたいおすすめの本をご紹介いたします。

 

  • 山本七平『日本資本主義の精神』
  • ジョン・メイナード・ケインズ『雇用、利子及び貨幣の一般理論』
  • マイケル・ポランニー『暗黙知の次元』
  • フリードリッヒ・リスト『経済学の国民的体系』
  • 孔子『論語』
  • フリードリヒ・ハイエク『隷属への道』
  • エドマンド・バーク『フランス革命の省察』
  • ジョージ・オーウェル『1984』

 

ご覧いただきまして誠にありがとうございました。

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下記に過去に関連書籍で書いた書籍の紹介している記事のリンクを貼らせていただきます。

【第一回】論争の余地なきおすすめの本ージョージ・オーウェル『1984』ー:Read For Action ブログ

 

【第五回】論争の余地なきおすすめの本ーエドマンド・バーク『フランス革命の省察』:Read For Action ブログ

 

【第十三回】論争の余地なきおすすめの本ー孔子『論語』ー:Read For Action ブログ

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