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【第二十回】論争の余地なきおすすめの本ーヤーコプ・ブルクハルト『世界史的考察』ー

【第二十回】論争の余地なきおすすめの本ーヤーコプ・ブルクハルト『世界史的考察』ー

ご無沙汰しております。北畑淳也です。

5回くらいで終わるかと思っていた書評コーナーですが20回目に到達しました。

 今後ともよろしくお願いいたします。

 

 

あんまり誰も読んでないと思って好き放題書いてますが、誰かの役に立っているかもしれないと願いつつ今日も本をご紹介したいと思います。

 

 

 

今日ご紹介するのはヤーコプ・ブルクハルトの『世界史的考察』です。

タイトル的にいかにも興味をそそられないかもしれませんが、まだ離脱しないでくださいね。

 

この著書の中の「歴史の危機」というチャプターがあるのですが、その中で記載されていることが眉唾もので、本日にも極めて当てはまることが多いのです。(今日危機の兆候が見られるということ)

 

 

今日は、ブルクハルトの「歴史の危機」というチャプターを中心にそこから今の日本の危うさとその克服をいかにして行うかを書いていきたいと思います。

 

■目次

 歴史の危機に見られるある現象

 ▶多面的考察のすすめ

 ▶合わせて読みたいおすすめの本

■歴史の危機に見られるある現象

日本経済がゼロ成長時代と言われ早20年近くが経ちました。

私のような若者であれば、そもそもずっとそうだったのではないかと思うくらい経済成長というものは馴染みのないものに思われます。

 

 

ではその原因は何なのかと考えた時にもちろん資本主義というパラダイムの限界もあるのですが、「同じ過ちを犯したから」というのが最も大きなものであると考えています。

 

 

考えてみれば、歴史を振り返った時、この20年というのは私からすれば同じことの繰り返しでした。

 

「構造改革」「イノベイション」「痛みを伴う改革」「東京大改革」など違うようで同じようなスローガンが社会に広まってはお祭り騒ぎをし特定のリーダーが打ち出す世界観に動員されてきました。

 

 

しかし、昨日までの熱狂はどうしたのかと問いたくなるほど、ある日急に「騙された」「もっと抜本的な改革ができる強いリーダーを」などと叫ぶというのがおきまりのパターンです。

 

 

 

要するに一切自分たちが反省することなく、馬鹿の一つ覚えのようにまた同じことの失敗を繰り返してきたのです。

 

 

 

ところで、なぜ日本人はこのような同じ過ちを繰り返してしまうのか?

この質問に答えてくれるのがブルクハルトの『世界史的考察』です。

 

 

 

今私が書いたことをまさに述べている一節をご紹介します。

危機の最初の段階においては、差し当り圧迫を加えている旧態が廃され、それを代表していた人たちが迫害されると、さっそくもう、なんとも馬鹿げていてびっくりさせられる現象が始まるのである。すなわち、こうした行為を遂行した最初の指導者たちが排除され、他の者にとって代わられるというのがそれである。
ヤーコプ・ブルクハルト『世界史的考察』

 

ブルクハルトの歴史観というのはヘーゲル(ダーウィン)的な進歩史観(歴史年表的)に歴史を見るものとは異なります。

 

 

むしろ歴史は同じことを繰り返していると円環的に考えるのがブルクハルトの歴史観です。(ニーチェの永劫回帰に近いものがある)

 

 

この立場の違いが何を意味するかというと「くりかえす」と考えた場合、「反省」が生まれるんですね。そして「同じ過ち」を繰り返さないためによく熟慮し行動も慎重になるのです。 

 

 

一方で、ヘーゲル的な何らかの高次の目的に向かって走り始める歴史観というのは「くりかえす」という意識がないので徹底的な反省の意識が薄いまま「行為」にすぐ移ってしまいます。

 

 

そして、それ以上にこの進歩史観というドグマの注意すべき点は回を追うごとにある目的のためには手段を選ばなくなるというところも指摘しなくてはいけません。

 

 

少しややこしいので改めてブルクハルトが何を言いたいのかを私なりに咀嚼します。

 

 

彼は「円環的に」歴史を捉えなおすことで「進歩」できるという考えを持っているのです。(ニーチェの永劫回帰に近い)

 

一方で、失敗を反省せず、「自らが進んでいる」と勝手に思い込んで行動し続けることがむしろ状況を停滞させると暗に伝えているわけです。

 

 

そして失敗を重ねると何をするかというと反省ではなく回を追うごとに過激になり、状況をさらに悪化させていくというのがブルクハルトによる進歩史観者への指摘なのです。

いかなる犠牲を払っても成功を自分の手に収めねばならないということが、やがてこのような時代に、手段に全く無頓着な態度を招き、また、最初呼び求められた諸原則がすっかり忘れ去られるという事態を招いた。こうして人は、真の、実りある建設的な出来事をすべて不可能にし、かつ、危機全体を汚してしまうテロ行為に行き着く。
ヤーコプ・ブルクハルト『世界史的考察』

 

「テロ行為」とよんでいるところが少し大げさな感もありますが、「成功」を果たすために手段を選ばないというのはテロリズムに近いことは否定できません。

 

 

さらに、もう一つブルクハルトが進歩史観者に付け加えていることがあります。

進歩史観者は妄想に妄想を重ねることで生み出された「外部からの脅威」をやたらと煽ることで愚行をやるということです。

 

この外圧を叫ぶ行為がテロ行為を正当化させる原動力になるとブルクハルトは述べます。

このテロ行為は、これを行う理由として外部から脅威を受けているという周知の言い訳をするのを常とするが、その一方でテロ行為は、ある部分捉えがたい内部の敵に対する極度に高まった憤怒からも起こるのであり、また、統治をするのに容易な手段を要求することからも起こり、さらに、自分が少数派であるという意識が膨れ上がってゆくことからも起こるのである。テロ行為は、それが進行してゆくうちに、やがて当たり前のこととなる。これは、テロ行為が弱まるようなことになるとたちまち、すでに犯されたことに対する報復が起こるのではないかという疑心が生ずるからである。
ヤーコプ・ブルクハルト『世界史的考察』

 

 

日本でも同様の例が見られます。

一例として経済成長をするためなら最近は何でもありになってきています。

 

例えば、著名なコンサルタントがよく「日本が世界の中で取り残されないためには外国人労働者を大量に入れなければならない」「日本はもう成長できないのでアジアの成長を取り込まないといけない。外に打って出ろ」と言っているのですが、GDPだかなんだかの統計数字を成長させるために大切なものを置き去りにしているのです。

 

 

「何か大切なもの」というのは例えば、前者についてはそれが社会不安につながるのではないかという考えであったり、後者については相手の国から搾取しに行くという帝国主義的な発想が本当に良いことなのかといった具合ですね。

 

 

長くなりましたが、私が言いたいことは一つです。

歴史の危機に起こるある一つの現象というのは「過去を振り熟慮することを忘れ、場当たり的にめちゃくちゃな行動し状況をさらに悪化させること」です。

 

 

 

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■多面的考察のすすめ

以前エドマンド・バークという人の本を紹介しましたが、バークが言っていたことに「馬鹿は改革のリスクがわからない」という趣旨の発言があります。

自国の過去を全否定する誇大妄想や独善から、どれほどのメリットが得られたか、具体的に考えてもらいたい。革命の指導者たちは、自国の祖先を軽蔑し、同時代人も軽蔑した。彼らは自分たち自身のことも軽蔑するに至り、ついには文字通り軽蔑に値する存在に成り下がった。
エドマンド・バーク『フランス革命の省察』

 

ブルクハルトもバークに同じく歴史を多面的に見る必要性を解いています。

さらにわれわれは一切の体系的なものを断念する。われわれは「世界史的理念」を求めるのではなく、知覚されたもので足れりとするのであり、また、歴史を横切る横断面を示すが、それもできるだけたくさんの方角からそれを示そうとする。
ヤーコプ・ブルクハルト『世界史的考察』

 

 

今我々に必要とされているのは特定の世界観に自分がいるのではないかという熟慮であったり、自らがまた同じ失敗を犯すのではないかということを歴史の多面的な考察を行うことです。(我々は進歩どころか退化しているのではないかと。)

 

 

そういった意味で「同じ過ちを起こさない反省」が求められています。

 

 

歴史というと何か明治時代やら何やらをイメージされるかもしれませんが、もちろんそれも大事ですが、ほんのここ数年を振り返ることも歴史を振り返るという意味になります。いつの時代を見るにつけても「何か今日的なものがあるのではないか」と思いながら再検討をすることが重要なのです。

 

 

歴史は繰り返すという円環的な発想が実はより一歩前へ進むことにつながるかもしれません。

 

 

 

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■合わせて読みたいおすすめの本

最後に合わせて読みたいおすすめの本を記載いたします。

お役に立てますと幸いです。

 

  • E.Hカー『危機の二十年』
  • 幸徳秋水『帝国主義』
  • フリードリヒ・ニーチェ『道徳の系譜学』
  • 山本七平『日本はなぜ敗れるのか』
  • エドマンド・バーク『フランス革命の省察』

 

【第五回】論争の余地なきおすすめの本ーエドマンド・バーク『フランス革命の省察』:Read For Action ブログ

 

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