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韓国の出版事情と、Read For Action読書会の可能性[前編]壁を突破する

韓国の出版事情と、Read For Action読書会の可能性[前編]壁を突破する

こんにちは、リーディング・ファシリテーターの下良果林(しもらかな)です。

Read For Action読書会の輪が、日本国内のみならず海外にも広まりつつあることをご存じでしょうか。

今回は、韓国で貿易や出版などの事業を展開するかたわら、Read For Action読書会を開催されている徐 丞範(ソウ スンボム)さんにインタビュー!
お父さまが韓国大使館勤務だった関係で、小学校5年生から高校2年生までの間、日本で暮らしていたそうです。

ずっと本が好きで、現在では出版のお仕事もされているという徐さんに、Read For Action読書会に対する反響や韓国の出版事情など、お話をたっぷりうかがいました。

徐さん

 * * * * *

― 普段のお仕事について教えてください。

Jターボという貿易会社を経営しています。韓国のターボ機械を日本で販売したり、日本から輸入したりしています。

そのほかに、HOWNEXTという出版社も持っています。HOWNEXTとは「次の一手」という意味。もともとこの言葉にふさわしいビジネスができないかと思い、ドメインだけ取得していました。知人が出版社を起こすことになり、HOWNEXTを社名として譲ったのですが、しばらしくて会社ごと引き受けることになりました。今は本の出版だけですが、将来的には出版プロデュースも展開したいですね。

今住んでいるのは、大田(テジョン)という、韓国の真ん中にある都市。日本の「つくば学園都市」のように学校や国、企業の研究機関があるところです。以前はソウルにも長く住んでいました。


― リーディング・ファシリテーターになられたのは、どのような経緯からでしょうか?

2016年11月ごろだったと思うのですが、何かのきっかけで登録したメールマガジンを読んでいたところ、リーディング・ファシリテーター養成講座の開催告知が目にとまりました。

Read For Action代表理事の神田昌典さんには直接お会いしたことはないのですが、彼の本は以前読んだことがあり、どんなことをしている人かは何となく知っていました。それでメルマガを登録していたのですが、それまで様々なセミナーの告知が来ても「僕は韓国にいるし、行けないなぁ」ということで、ざっと目を通して終わり、でした。

でも、もともと本が好きだったこともあってファシリテーター養成講座の告知を目にし、「ちょうど出張で日本へ行くので、帰国の日程を調整すれば参加できるかも」と思ったのです。開催が日曜日で、本来の帰国予定が土曜日でしたが、スケジュールを調整。木村祥子シニア・リーディング・ファシリテーターの講座を受けることにしました。


―ファシリテーターになるまでRead For Action読書会に参加された経験をお持ちではなかったのですね。
リーディング・ファシリテーターになられてから、読書会開催に至るまでの経緯は、どのようなものでしたか?


そうですね。出張の際に参加できればよかったのですが、なかなかタイミングが合わず……。

リーディング・ファシリテーター養成講座を受けてみて「こういう進め方でやるのか。では開催してみようかな」と思いました。Read For Actionのポータルサイトでは韓国在住としては登録できないため東京都に設定し「日韓をまたがるファシリテーター」として出張の際は日本でも開催しようと思っていたのです。でも、他の読書会に参加したことがないし、だんだん仕事に追われるようにもなってしまって……。
読書会は、最初に開催するのに勇気が要りますよね。「できるかなぁ」という不安。その壁を一度突き抜けないといけない。

いろいろ調べていくうちに「一度フォトリーディングの講座も受けてみたほうがいいかも」と思うようになりました。Read For Actionはフォトリーディングから派生したものだと耳にしましたし、フォトリーディングそのものにも興味を持ちました。それで今年の始めに、石ヶ森久恵さんの3日間の講座を受講しました。

ところが、そのフォトリーディングもなかなか習慣化できず……リーディング・ファシリテーター養成講座のときもそうだったのですが、参加している間は「これはすごい!」「僕にもできるぞ!」という感じなのですが、普段の生活に戻るとなかなか上手くいかないものです。フォトリーディングをするのが苦しかったというか……「何か」が足りなかったんでしょうね。それで調べていくと、石ヶ森さんもすごい講師だけれど山口佐貴子さんという方もすごいと知り、山口さんの講座を再受講しました。すごくよかったですね。吹っ切れた気がしました。

フォトリーディングのスキルそのものは、既に受講していたので問題はなかったのですが、自分自身「こんなに楽しいんだ!」と実感できなければできないのだということがわかったんです。「苦」の感情が「快」の感情に変わった。そこがキーポイントでしたね。
それで、気持ちが完全に吹っ切れて、逆に今やフォトリーディングをしないと読書できない、というくらいになりました(笑)。

そういう風に自分自身に変化があり、吹っ切れたタイミングで、Read For Action読書会をすることになりました。

ソウルにいる知り合いが韓国で『私はひとり起業家だ』という本を出版し、「ひとり起業家」を集めた組合をつくったりもしているのですが、そのような「ひとり起業家」が集まるフォーラムに呼ばれて参加したんです。そこで、好きな本の話をしたり「日本ではこういう本が流行っているよ」という話をしたりした流れで「日本にはRead For Actionという読書会があり、僕はそのファシリテーターだ」と伝えたところ「えっ、それなら開催してください」「やり方を教えてください」ということになったのです。
「僕はシニア・リーディング・ファシリテーターではないので、ファシリテーターを育てることはできません。でも、それがどういうものか体験していただくことはできますよ」とお伝えし、開催に至りました。

読書会開催は勇気が要るので、本格的に始める前にまず気心の知れた人たちとやってみたい、と思っていました。それで彼らに向けて2回ほど開催したのですが、とても反響が良かったですね。彼らは現在「行動読書会」のような名前で、月に一回ランチをしながら簡単にRead For Actionもどきの読書会をやっているようです(笑)。


― その後は、どのような読書会を開催されていますか?

たまたま、テジョンにある小さい本屋のご主人と仲良くなりました。健康をテーマにしたお店で、本以外にも韓国の色々な農家や産地と直接取引し、野菜や果物も販売している異色の本屋です。お店の雰囲気が落ち着いていて、ご主人も気軽に相談に乗ってくれるような方なので、わざわざソウルからその店を訪ねてくる人もいるほどです。

その本屋の常連さんから「ここでは読書会を開いていないのですか」と問い合わせがあったそうで「実はRead For Actionという読書会があり、自分はそのファシリテーターだ」と伝えたんです。「僕もテジョンで本格的に読書会を開催できる場所はないかと探していたところです」と話したら「どうぞここを使っていただけませんか」と。それが今年の7月です。

会場がご主人の事務所スペースなので、ぎゅうぎゅうにつめて7人くらいがどうにか入れるようなところなのですが、ご主人がコーヒーを淹れてくれるので飲み物無料ですし、場所代も無料。食べ物も持ち寄りで、本代くらいしかかかりません。

読書会

最初は2週間に1回くらいやろうかな、と企画していたのですが、反響が良すぎちゃって(笑)。「この日だけを待っていました!」と言われるようにもなり、出張時を除いて週1回は開催しよう、ということになりました。


― それはすごいですね!
課題図書はどのように決めていらっしゃいますか?


基本的に、僕が課題図書を選んでいます。健康に関する本屋さんで開催するときも、特に健康をテーマにしているわけではありません。ただ、読書会のグラウンドルールを決める際「どこで本を手に入れるのか?」という話になり、参加メンバーのひとりが「では、ここで買うというのをルールにしましょう」と発言したんです。「それがいいね」ということになり、この書店で注文するのがルールになりました。書店にとってもメリットになりますし、参加者が注文した本を受け取りに行ってお店の人とおしゃべりできるのも良いことです。

ちょうどリーディング・ファシリテーターになったころ、ある日本の書籍を翻訳したいと思い、著作権交渉をして翻訳権を取得し、僕が翻訳をして今年3月に出版しました。それは『藤原和博の必ず食える1%の人になる方法』(東洋経済新報社)。僕が出版社を運営することになってから出した初めての本です。その本を課題図書にし、参加した人たちにプレゼントしました。

読書会

その後は『LIFE SHIFT(ライフ・シフト) 』(リンダ グラットン・アンドリュー スコット著/東洋経済新報社)も課題図書にしました。日本でも大流行していますが、韓国ではあまり宣伝されず、話題にものぼらず。そもそも原題は「100歳人生」で、韓国では「LIFE SHIFT」というタイトルではないんです。

読書会

例の「ひとり起業家」フォーラムで知り合った人がPodcastを配信していて「それに登場して、日本の出版トレンドやおすすめの本を紹介してほしい」と言われたので『LIFE SHIFT』について紹介しました。その後「もしかしたら100歳人生というようなタイトルで翻訳されているかも」と思い調べてみたら、実は既に翻訳されていると知ってびっくり(笑)。慌ててPodcastに「この本はすでに韓国で翻訳されています」とキャプションを入れてもらったのですが、その番組はダウンロード件数が1万件ほどで人気が高く、反響が良かったです。この本はいろんな人におすすめしているので、僕が100冊くらい売っているかもしれません(笑)。

書店開催の読書会のほかにもうひとつ、大学の先生や新聞記者など忙しい人たちのための読書会を始めました。それも、知り合いが無料でイベントスペースを貸してくれて。知り合いを含めて5人くらいに集まってもらい、毎月第四週火曜日に開催しています。そこでも『LIFE SHIFT』を課題図書としたのですがやはり反響がよく「『LIFE SHIFT』はどこで読書会を開いても効果があるんだな」と思いました。

その後は、韓国でも翻訳されて大ヒットした『やり抜く力 GRIT(グリット)』(アンジェラ・ダックワース著/ダイヤモンド社)や、日本では翻訳されていないのですが台湾人作家の『幸運の練習』という本を課題図書にした読書会を開催。来週おこなうのは韓国の女性作家による小説の読書会です。皆さん、僕がどんな本を選ぶのか、どのようなメソッドでおこなうのかを楽しみにしてくれているそうなので、自分自身いろいろなメソッドを試し、勉強しながら読書会をするのもいいかな、と思っています。ビジネス書や自己啓発書ばかりではつまらないので、思いもしないような本でやってみたり、ワーク付きの本を取り上げて実際その場でやってみたりするのもいいかもしれないですね。

読書会

― 読書会の反響は、いかがでしたか?

やはり「本を読んでこなくていい」というのは大きいですね。「本当に読んでこなくていいんですか?」と言われます。

Read For Actionでは短い時間で集中して読むのですが、その時間はわずか20分程度じゃないですか。それでも皆で読みその内容をシェアするので読んだ気分になりますし、特に『LIFE SHIFT』は気づきが多く、話をしているうちにハマっちゃうんですよね。それを見ているうちに僕自身のモチベーションも高まり「これは使えるな」と思いましたね。「これだったら僕も韓国でできるな」と。

読書会でいつも強調しているのが「本がメインではない」ということ。「本はあくまでもきっかけです」と。自分でもそう感じています。
ですので、本を読んできても読んでこなくても、皆一緒なんですよ、とお話しています。大学の先生が来ようと、偉い人がこようと、皆一緒。このRead For Action読書会ではみな平等です、リーディング・ファシリテーターがそうさせるんです、とお伝えしています(笑)。

他のイベントだとやはり、立場の偉い人が来るとそういう人たちが話の中心になり、そうでない人はなかなか話すことができません。喋れない人は全然喋れずにいるんです。

読書会


― 「今後こういう読書会を開催してみたい」「Read For Action読書会を用いて、このようなことがしてみたい」という展望はございますか?

いつも同じメンバーに向けて読書会を開催しているのですが、そうするとなかなか新しい人が入ってこられないという状況になっています。皆さんハマっちゃって(笑)。

Facebookで読書会情報を発信しているうちに「釜山(プサン)まで遠征してくれませんか?」といわれることもあるんです。そのように遠方からの依頼もあるので、たまには場所を変えてイベント制にし、その幹事に集客してもらう、というのも考えています。

例のテジョンにある書店の隣に、カフェのようなイベントスペースがあります。そこなら20人くらい動員できるので、土曜日の夕方など皆が集まりやすい日時でやってみてもいいかな、と思っています。僕の感覚ですと、1人のファシリテーターが対応できるのは、1テーブル5~6人×2テーブルくらいかな。大人数だとサポートファシリテーターが必要になりますが、韓国のリーディング・ファシリテーターは僕ひとりしかいないので……。

参加者の中には、20代の学生や30代の社会人もいるのですが、彼らから「自分もリーディング・ファシリテーターになれないでしょうか?」と聞かれたことがあります。嬉しいですよね。

しかし残念ながら韓国にRead For Actionはなく、現状ではそもそも日本語ができないと養成講座に参加することは難しい。僕がシニア・リーディング・ファシリテーター養成講座に参加して認定を受ければいいのですが、それまでには時間がかかってしまいます。ファシリテーターになりたい、と言ってくださる人には「まあ、ちょっと待ってください。 そのうち養成講座を開催できるようになるでしょう」とお伝えしています。

今、本気で考えているのが「Read For Action Korea」をつくる、ということ。テキストの翻訳許可をもらって韓国で展開したい。いつかビジネスプランを描いて、神田さんにプレゼンして……というのもしてみたいですね。

フォトリーディングも、現在は石ヶ森さんが中心となり、中国の「行動派」と呼ばれている人たちと組んで展開していますよね。Read For Actionに関しても、世界に広めたい気持ちは一緒なのではないかと思います。
今はとにかく韓国で頑張って読書会を開催し、Read For Actionを広めて実績を作っていきたいです。「これだけニーズがあるのだから、韓国でもやりましょう」と呼びかけたいです。

Read For Actionのメソッドを使い続けて韓国で認知が広まれば、ビジネスにもなると思っています。例えば、企業内でイノベーションを起こすために研修をおこなっても、話がなかなかまとまらない……というときにRead For Actionのメソッドを使うのは有効です。その社長が出している本を社員に読ませるのにもいいですよね。そういうニーズに対して、ビジネスとしてRead For Action読書会を展開できるのではないかと思っています。


― Read For Action読書会に興味があったり、認定ファシリテーターになったりしても、なかなか「次の一歩」が踏み出せない方は多いと聞いています。
そのような方にエールをおくるとしたら、どのような言葉をかけますか?


読書会に関して、僕は行動に移すための第一歩、まさにベイビーステップがなかなか踏み出せなかった。木村さんに相談して「日本に行くタイミングで読書会を開催してほしい。参加したい」とお伝えしたのですが、なかなかタイミングが合いませんでした。
そのうちに「自分で開催してみよう」という勇気もタイミングもなくなり、自信もなくなっていき……「いつになったら開催できるんだろう」と不安だったんです。それがあるときに吹っ切れて「快」の感情が起こり、一気に心に火がついて、行動に移せるようになった。それがきっかけで、いろんな展開につながっていった。「これはやはり行動してみて初めて身につき、わかるものなんだな」と思いましたね。最初は不安なので、読書会では養成講座でもらうテキストをそばに置きながら開催していました。今ではテキストを手もとに置かなくても大丈夫ですけど。

第一歩が踏み出せない方にエールをおくるとしたら……もちろん何事も行動なのですが、そうはいってもなかなか踏み出せませんよね。ファシリテーターになったら、まずは模擬的な読書会を開催してみてはどうでしょう。ハードルを下げてみて、親しい友人を数人招いたり、家族とやってみたり。友人と集まってお茶するときに、本だけ持ってきてもらって、とりあえずやってみる。まさにそれこそがベイビーステップなのでは、と思います。
養成講座の中に「ミニ読書会」と称して、新米ファシリテーターが実際に練習できるような場もあるといいかもしれませんね。

読書会

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ありがとうございました。
インタビュー後編では、韓国の出版事情や読書会の可能性などをお伝えします。

後編記事はこちらから:
http://blog.read4action.com/interview/20171020/index.php

徐 丞範さんプロフィール
https://www.read4action.com/facilitator/detail/?id=1986

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https://www.read4action.com/event/list/?cat=1

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(2017年10月取材)